当院の高血圧症の診療で
大切にしていること

1.「ガイドラインの遵守率の改善」

 ガイドラインとは極端に言えば教科書です。各学会が「世界中」の新旧含めた賛否両論の研究を吟味し、わかりやすくまとめた指針のことです。一つの研究だけでなく、同様の研究や、反対の結果が出た研究を調査して判断します。数年毎に新しい研究の結果を加えてガイドラインが出ます。そのため数年ごとの再学習が必要で、学習後治療に当たります。

.食事療法、運動療法薬物療法のバランス

 多忙な医療現場では食事療法、運動療法などの生活習慣の指導を十分な時間が取れないことが多いです。しかし、上記のガイドラインでは運動療法、食事療法、行動療法は重要であることが指摘されています。

 時間が許す限り薬物療法以外の治療も注目して治療を行っていきます。勿論、一度で全てはわからないこともあり、時間が経つと忘れることもありますから、通院の際に少しずつ病気について一緒に学んで行きたいと思います。そのことをセルフケアサポートと言います。ちなみに長時間労働を続けると高血圧リスクは高くなると言われています(1)。ワーカホリックになるのは注意しましょう(自戒を込めて)。

 ただし、食事療法や運動療法の効果は無限大ではありません。塩分制限(半減)による血圧の低下は収縮期血圧5mmhgほどの低下です。薬物療法とのバランスを保ちながら治療を行いたいと思います。特に高齢者は極度の塩分制限を行うと食事量が減って、血圧は下がったが体力が落ちたということになりえます。

.個別化した治療

 ガイドライン、教科書でいくら「○○したほうがいい!」と言われていたとしても、治療にそうそう納得出来ないことも多々あります。リスクをお話した上でどう治療するかを判断していきます。

 また、高齢期になると、持病が多くなり(併存疾患の増加)、治療の効果が乏しくなったり、副作用が出やすくなったりします。副作用のチェックをしつつ、患者さんにあった薬物に調整していきます。

4.すべての年代への治療を

 Nippon Data80という研究で見られる通り、血圧の治療は30-65歳が治療効果が高いです。相対危険度の縦軸が75歳以上と比べて違うのです。ただし、その世代は仕事が忙しいことが多く、受診がしにくいという一面があります。下記の「なぜ高血圧の治療が必要なのか」にかかれている通り最終的には時間もプラスになると思います。労働世代に向けて、土曜日の診療や17-18時の診療、コントロールが安定し、生活習慣の是正するところがなくなれば2ヶ月処方も検討しています。

 高齢者は治療を厳しくしなくても良いのではないかという研究結果が一時期増えました。実感としては2~4年前は多かったと感じています。しかし、ここ1~2年は高血圧や高コレステロール血症も高齢者も十分に恩恵があるという研究結果が増えてきています。

ガイドラインに沿って、標準的(スタンダード)、保険で認められている治療を提供できることを目指しています。

関連リンク

日本高血圧学会:ガイドライン2019 https://www.jpnsh.jp/guideline.html
*中頃に概要のPDFが公開されています

なぜ高血圧症の治療が必要なのか

1.脳卒中の予防のために

 高血圧症は脳卒中の原因の1つです(オッズ比 2.9)(2)。脳卒中は要介護状態になりうる典型的な疾患です。介護が必要な状態は、健康面、精神面、就業に悪影響を与えます。また、家族が介護を必要としたり、介護施設への入所も考えなければいけなくなります。

時間的には、自分の健康寿命が短くなり、家族は介護への時間が必要になります。病院は確かに待ち時間が長いですが、1~2ヶ月に一度の受診は元が取れると思います。

費用的には、1ヶ月の受診と薬代を合わせると2000~3000円(3割負担)くらいでしょうか。血液検査をするともう少し費用がかかります。薬代は一番安くて、一日3円程度(3割負担)です。例)ナトリックス 薬価10円 自己負担3円。一方、脳卒中になり、施設入所が必要になった場合は、おおよそ佐賀市では10~30万円/月です。費用的にも十分元が取れると思います。

2.認知症の予防のために

高血圧症は認知症の原因の1つです。特に中年期~晩期の高血圧症は特に認知症のリスクが上がると言われています。(ハザード比1.41)(3)。脳卒中と同様に、認知症も要介護状態になりうる疾患の1つです。

薬を始めると一生飲む必要があるか?

結論としては9割ほどはそうなります。血圧は年齢と共に上がる傾向があります。一方、生活習慣で改善できる血圧には限りがあります。そのため、実際は一生飲む人が多くなります。