在宅医療系
勇美記念財団さんが無償で提供してくれている在宅の基礎的テキスト、e-learningサイトです。無料の在宅医療実務の教科書ですが、内容は有料レベルで、初期には最も参考にすべきものです。
内科医が知っておくべき在宅診療のクリニカルパール
日本内科学会が特集を組んでくれました。高齢者、在宅、精神疾患、総合診療と老年医学、創傷処置とテーマ別に解説されています。各論としては十分な内容ではありません(上の在宅医療テキストのほうが詳しい)が、総論としてはいい内容だと思います。地域医療実習に行く研修医や学生にお勧めの一冊です。
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/naika/111/0/_contents/-char/ja
「虚弱高齢者の終末期ケア」
高齢者医療において非常に重要なトピックを扱う本です。特に、患者と医療従事者のコミュニケーションや意思決定プロセスに焦点を当てています。特に興味深いトピックを以下に上げています。
4章 緊急ACP、SPIKES、NURSE、REMAP
ACP(Advance Care Planning)は、将来の医療やケアについて前もって話し合い、決めておくプロセスです。「緊急ACP」は、急変時や緊急時にどのようなケアを望むかを迅速に決定する方法を指します。
SPIKES、NURSE、REMAPは、医療コミュニケーションのフレームワークです。SPIKESは悪い知らせを伝える際のステップ、NURSEは感情的な患者への対応、REMAPは意思決定支援のためのガイドラインです。
高齢者の急変時に備えて事前に話し合っておくことの重要性と、その際の効果的なコミュニケーション方法を学べるのが魅力。患者や家族と良好な関係を築き、信頼を得ることができるでしょう。
3章 意思決定支援の意義、納得感
「意思決定支援」は、患者が自分の価値観や希望に基づいて医療やケアの選択ができるよう支援することです。
「納得感」は、患者や家族が決定プロセスや結果に満足し、心から同意できる状態を指します。
高齢者の尊厳を守り、自己決定権を尊重することの大切さが伝わってきます。単なる医学的な最善ではなく、患者の価値観に沿った選択を支援し、納得のいく決定を導くスキルを学べるのは、ケアの質を高める上で非常に有益です。
8章 終末期の意思決定支援、本人らしさ、納得感、システムやアプローチの方法の具体例
「本人らしさ」は、その人の個性、価値観、生き方を尊重することです。終末期でも、その人らしい生き方を全うできるようサポートすることが重要です。
システムやアプローチの具体例では、病院や施設でどのように患者の意思を尊重するプロセスを組み込んでいるかが紹介されています。
例)訪問看護師と外来看護師のダブルキャリア、患者さんごとの担当者制度
終末期は人生の総まとめの時期。その人らしく最期を迎えられるよう支援することは、ケアの究極の目標です。実際の現場での取り組みを知ることで、自分の職場でも実践できるヒントが得られます。
この本は、医学的知識だけでなく、患者中心のケアを実践するための具体的なスキルやシステムを提供してくれます。高齢者の尊厳を守り、本人の意思を尊重しながら、納得のいく終末期ケアを提供する方法を学べるのは、医療従事者として大きな学びになるはずです。患者や家族との信頼関係を深め、心に残るケアを提供したいと思う方にぜひおすすめしたい一冊です。ただし、多死社会において、時間のかかるこのケアを、人的資本を投入してすべての人に提供できるのだろうかという問いは残りました。